ベニヘリテントウは美人局?
−オオワラジカイガラムシと天敵ベニヘリテントウ−
自然観察大学講師  山崎秀雄
 2013年5月12日、野川公園の自然観察大学の観察会が終り、昼食を取り小休止の後、観察コースを逆にたどり昆虫の写真を撮りながら入口に戻った。
 オオワラジカイガラムシ(以下、オオワラジ)の観察場所に行き写真撮影を行う。オオワラジの数は減っていたが、撮影を始めた。オオワラジに似るが小さく変なムシがいることが、ファインダーを通して分かった。オオワラジの成長遅れの若虫のようにも見えたが、体側から脚が見え、また形が違うことが分かった。
オオワラジカイガラムシ雌成虫(上)とベニヘリテントウ幼虫(下)(東京都野川公園、2013.5.12.)
ベニヘリテントウ幼虫(東京都野川公園、2013.5.12.)。奇妙な形だが、脚の形はテントウムシ幼虫そのものである。
 オオワラジの捕食者らしいが、しばらく観察していてもオオワラジに噛みつくことはなかった。自分より大きなオオワラジを食べるためには、噛みついたとき麻痺させるような物質を分泌しないと、暴れられて食べることはできなさそうである。
オオワラジとベニヘリテントウを見た後も写真を撮りながらバス停に向かう。
途中ツツジの葉にいたムシクソハムシがフレンドリーだったので、良い写真が撮れた。
 ベニヘリテントウについて、この場では種名が分からなかったが、家に戻って調べるとベニヘリテントウの幼虫であった。図鑑にはオオワラジの天敵とある。
ベニヘリテントウ成虫(千葉県市川市)。
体長4-6mm。気をつけていると葉の上などで見つけることができる。
 オオワラジでは皆さんはどのような写真を撮っているのか、インターネットで調べると、オオワラジの雌や雄を捕食している写真があちらこちらにある。成虫になった雌は大きく食べにくいのか。
オオワラジカイガラムシ雄成虫(東京都野川公園2013.5.6)
観察会の下見で、N田嬢の服に飛来した。浮気性(?)の雄だ。
 ベニヘリテントウ幼虫はオオワラジ雌の体の下や近くに隠れて、雌を求めて飛来した雄を捕食するようである。
 か弱い雄を食いものにしているところをみると、ヒトの世界の「美人局(つつもたせ)」を連想した。囮の女に誘われチョッカイを出す優男(やさおとこ)から、女の旦那(男)が金銭をゆすり食い物にするのが「美人局」であるが、昆虫の世界にも雌に群がる雄を食い物(食糧)にする、“ひも”ならぬ捕食者がいるとは。