2010年12月19日の室内講習会 アンケート紹介
『野外観察で出会う 雑草と野草の綱引き』 岩瀬徹先生 
 …Oさんより
 今年の野川公園での観察会で、カントウタンポポの話題から管理をする人の認識や価値感の重さを痛感しました。そしてさらに今回のお話は、今私が勤務先で直面している問題と重なり、興味深く拝聴しました。
 人との利害関係の中から、雑草と野草に区別される。まさにそれが現実です。
 勤務地の公園内に、かつてこの辺りを潤した堰(せき)の跡が残っており、歴史愛好家の方々から“その場所を保全し、案内できる場としたいので、ボランティアで草刈りをさせて欲しい”と申し出がありました。
 提案の理由は「現在手付かずに放置されており、藪化している。だから綺麗にしたい。」
 管理している私たちの立場で言えば、決して放置しているわけではなく、堰の形状は見えますし、すぐ脇の園路ではハルジオン、ヒメジョオンをはじめ外来種を抜き取る作業を続けています。藪化しているといわれる場所には、クモキリソウ、イチヤクソウ、ウメガサソウ、フデリンドウなどが個体数を増やしています。そして、講演で岩瀬先生に紹介いただいた霧が峰のように、不思議とその中には帰化植物はありません。
 しかし、すでに綺麗さっぱり刈り取られた低木の中にはイボタノキやクロウメモドキなどチョウの食草もあり、作業の際に踏みちぎられたウメガサソウが無残に横たわっていました。今日、堰内にあった5本の樹木も伐採されて空は明るくなりました。日当たりや乾燥などの環境変化がどう影響してくるのか… テーマ別観察会で学んだ、単純ではない暮らしをしているシダたちはどうなるのでしょう。心配は尽きません。
 それもまた、都市公園と言われる中で生きるものの運命なのか
 管理人としていつでも悩むところです。これから予定されているボランティア作業日には、ある意味の戦いがはじまるでしょう。ウ〜ン
 毎春、虫たちのレストランとして賑わっているハルジオンを見ると、「もう少し、花が終わるまで除草作業は待とう」と思います。人間との関わりだけで、雑草や外来種を厄介者扱いにしてしまうけれど、昆虫や野鳥にすればどうなのだろう。とは言っても在来の植物からすればどうなんだろう… 分からなくなっちゃいます。
 思いつくままに、申し訳ありません。
 守られた植物のお話の中で、「ホッとしました。」と語られる時の岩瀬先生の嬉しそうなお顔が、とても優しくて印象的でした。

『身近な生物多様性を観る・守る・使う』 平井一男先生 
 …Mさんより
 生物の多様性を守るということは、単純ではないですね。
 アブラムシの場合は宿主植物と宿主転換先の植物までも知ることが必要であるし、タガメのように水生昆虫だと思って田んぼ、池だけに目を向けていても、取り巻く環境や越冬場所までの環境を守ることをしなければ絶滅させてしまう。それぞれの繋がりを理解していないとならないのだから、奥が深いです。
 自然観察大学に参加させていただけるようになって、お陰さまでこのあたりも考えられるようになりました。
 昆虫の卵の形からも、「守る」知恵が観えるのですね。守る目的があるにしても、どうして、ゼフィルスの卵は あんなに芸術的な形になるのか不思議です。
 お話にもあった“クロメンガタスズメ”“オオスカシバ”は長野県の安曇野でも見られるようになりました。15年くらい前にツマグロヒョウモンの幼虫が確認された時はビックリ! でしたが、ナガサキアゲハなど毎年驚かされることが続きます。やはり温暖化の影響なのでしょうか?
 余談ではありますが、職場のサワラの洞にニホンミツバチが8年営巣していました。(その前はセイヨウミツバチが利用)
 今年、一頭のクマが根元に出来たアリの巣を見つけ、樹に大きな穴があき、その穴とミツバチの巣が一部繋がり、次に現われた別のクマが下から穴を広げ、蜜をたいらげていきました。
 観察場所だったニホンミツバチの巣も、影も形もなくなってしまいました。
  ミツバチとキイロスズメバチ
  ミツバチとオオスズメバチ
  ミツバチの巣をめぐってのオオスズメバチ同士の戦い
  ミツバチとツキノワグマ
 多くの戦いの場面をみてきましたが、これも多様性の中だからこそ観られるものだったのかもしれません。
 これからも、ますます広い視野で自然を観察できるよう学んでいきたいと思いました。ありがとうございました。
講習会での平井先生(左)と岩瀬先生(右)
<事務局より>
アンケートをいただいたOさんとMさんは、公園の管理業務に就いておられる方です。お二人とも観察会や講習会ではいつも熱心に参加いただいています。
自然観察大学では、過去に複数の方から共通の悩みをご相談いただきました。今回、みなさんのご参考になればと考えて、ご本人の了解のうえ、アンケートを紹介させていただきました。ありがとうございました。
アンケートではそのほか、おおぜいの方からごていねいなご意見をいただいています。講師の先生方やスタッフは励まされるとともに、たいへん参考になっています。厚く御礼申し上げます。
※ 講習会レポートは ⇒こちら をご覧ください。