クヌギの二度目の新緑?
2010年6月28日の自然観察大学ブログで、同じタイトルの疑問を掲載しました。
写真のように、クヌギの旧い葉と新葉がくっきりと分かれていたのです。
「クヌギは落葉樹だから旧い葉も今年開いたに違いないし、いま新緑を見せている新葉と二度新緑があることになります。この不思議な現象について、どなたか教えてください。」
…という疑問に、ある専門の先生がていねいに答えてくださいました。
以下、原文のまま掲載させていただきます。どうもありがとうございました。
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クヌギの2度伸びはごく普通にみられるようです。この伸びは、春に開いた頂芽がほぼ一斉に葉を開いたあと、いったん芽鱗をつくって、それがまた展開してくるというものです。コナラやクスノキでも同様な現象がふつうに見られますが、これらの他の樹種では、7〜8月に2度目の伸びがみられることが多いので、“土用芽”などと称されます。
クヌギはふつう5月下旬〜6月に展開してくるので、他よりも早期に2度伸びが見られます。日当たりのよい場所に生えた実生では、2度どころか、4度程度も伸びることがあるようで、若木のほうが伸びの回数は多い傾向があるようです。クヌギはドングリをつけるような成木でもごく普通に2度伸びが見られます。春の最初の伸びの際には、葉腋に花をつけますが、2度伸びでは花をつけることはありません。2度伸びがあると、芽鱗痕から枝の伸びの年次や生長履歴を正確に推定することは難しくなります。日当たりが良いなどの好条件下では、新たな葉を開いて枝を伸ばすことは、光合成による稼ぎを増やす上で有意義ですが、この枝葉を伸ばすのには、3つ程度の方法があります。
(1) 春に開いた枝先が休まずに伸びて葉を展開しつづける
(2) 春に展開した枝は伸びと葉の展開を止め、枝先の(その枝と葉を造った)生長点は脱落するが、枝先の葉の腋にできる芽(仮頂芽)が新たに展開してくる
(3) 枝先の(その枝と葉を造った)成長点が一旦葉の展開を止め、冬芽様の休眠芽をつくったのちに、それが再展開する
の3つです。クヌギは(3)にあたります。(2)のような伸びは、エノキ、ヤマグワなどでみられますが、個体としては2度伸びでも、枝(シュート)としては1度しか伸びていません。(2)の変形として、ミズキなどのように最初の枝の腋芽が横方向に伸びて、付け足すように枝葉をつくり、これを繰り返す場合もあります。
いずれにせよ、単に種類を見分けるだけではなく、枝葉の展開に注目することは、植物の生活を観察するまたとない視点だと思います。
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