全農教 観察と発見シリーズ
石ころ博士入門

高橋直樹・大木淳一/共著
全国農村教育協会
2015年5月9日発行
B5判 176ページ
定価(本体2,2,700円+税)
出版社からの紹介 http://www.zennokyo.co.jp/book/hakase/Dr_s.html
「石ころ」から地球の成り立ちまで考えられる本ができた
自分たちはどんなところに住んでいるのだろう? 
過去にどんな歴史・現象があって、現在のような地形になっているのだろう?
 …自分の住む地域に興味を抱く人は多い。
四季があり、地域によってさまざまな気候風土を持つ日本では、意識することなく自然の恵みを享受している。自然の力は大きく、ときに災害となることもある。
現在の環境は、過去の自然・地球の歴史によって作られているといってよい。
その土地の歴史を知る方法として、古地図や古文書を見て昔の地形を知ることもできるだろう。しかしもっと身近に、もっと大きなスケールで、成り立ちや特性を知る手段がある。それが「石ころ」である。
本書は、どこにでもある「石ころ」を観察して、地域の、大地の、そして地球の成り立ちまでを考えようという本である。
著者らは精力的に全国各地から岩石を採集し、薄片をつくってこられたという。
紙面では通常の岩石標本の写真に加え、ルーペで見た拡大写真、薄片を偏光顕微鏡で見た写真を紹介し、そこに含まれる鉱物など、岩石の種類を見分けるポイントをていねいに示してくれている。
さらに地層や露頭、溶岩や火山・マグマの動きなど、現地の写真やイラストを駆使して、岩石のできる過程を解説してくれる。
著者はお二人とも千葉県立中央博物館の研究員で、フィールドワークや観察会で指導してこられた。
積み上げてきた豊富な経験と、多くの人の協力によって、本書が完成したという。じつにていねいにつくられた本である。
この本をめくっていくと、岩石のでき方が分かり、種類の見分け方が身についてくる。本書によって自然に石ころに興味がわき、地質学・岩石学へ無理なく誘導してくれるのだ。一見子供向けのように思えるが、内容は本格的で、ぜひフィールド好きの大人にもおすすめしたい。
「石ころ」の歴史は数千万年、数億年だという。我々の想像もつかない地球の歴史を、「石ころ」は知っているのだ。本書を使って、改めて石ころを観察しよう。「石ころ」から学ぶべきことは多いだろう。
 自然観察大学学生 川名聡

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